「早く寝なきゃ」と思うほど、スマホが手放せない
こんにちは。こころのかふぇ代表の大城です。
ここにいる皆さんは、賢明な方ばかりだと思います。
仕事では効率を重視し、健康のために野菜を食べ、将来のために貯金をする。論理的で、理性的な判断ができる大人たちです。
しかし、そんな私たちが深夜1時を過ぎた瞬間に、突然「論理」を窓から投げ捨ててしまうことがあります。
明日は朝7時起き。今は深夜1時半。
どう計算しても、今すぐ寝れば5時間半は眠れます。ギリギリ許容範囲です。
でも、もしあと30分スマホを見てしまったら? 睡眠は5時間を切り、明日の午前中は地獄を見るでしょう。
小学生でもわかる簡単な算数です。
「今すぐ寝る」が正解。「スマホを見る」は不正解。
それなのに、なぜ私たちはベッドの中で、まるで何かに憑りつかれたように親指を動かし続けるのでしょうか?
どうでもいい芸能人のゴシップ記事を読み、会ったこともない人の猫の動画を眺め、気づけば深夜2時半を迎えてしまう。
そして翌朝、重たい頭を抱えながら鏡の前でこう誓うのです。
「今夜こそは、絶対に早く寝る」と。
……でも、その誓いが守られたことは一度もないことを、私たち全員が知っています。
なぜ、昼間あんなに賢い私たちが、夜になるとこれほどまでに愚かな選択を繰り返すのでしょうか?
実は、これは「意志の弱さ」や「スマホ中毒」といった単純な話ではありません。
あなたの脳内で、ある「復讐劇」が起きているからなのです。
その正体は「リベンジ夜更かし」

心理学には、この奇妙な現象を表す言葉があります。
「Revenge Bedtime Procrastination(リベンジ夜更かし)」です。
直訳すると「報復的な就寝先送り」。
なんとも物騒な名前ですよね。「復讐」だなんて。
一体、私たちは誰に、何に対して復讐しているのでしょうか?
上司? パートナー? それとも社会?
いいえ。私たちが復讐している相手、それは「自由のない昼間の時間」です。
原因は「昼間にガマンしすぎていること」
この心理メカニズムは非常に興味深いものです。
私たちは日中、多くの「やらなければならないこと」に追われています。
仕事、家事、育児、勉強、人間関係の空気読み…。
朝起きてから帰宅するまで、私たちの時間は「誰かのため」あるいは「社会的な責任」のために消費されます。
自分の意思でコントロールできる時間が、昼間にはほとんどないのです。
すると、脳の奥底でこんな声が聞こえ始めます。
「おい、私の人生、いつ私のものになるんだ?」
夜、ようやくすべてが終わり、一人になった瞬間。ここが唯一、誰にも邪魔されない「聖域」です。
もしここで素直に寝てしまったら?
そう、寝て起きたら、またすぐに「自由のない明日」が始まってしまいます。
だから脳は抵抗するのです。
「寝てたまるか! 今寝たら、今日という日に『私』がいなかったことになるじゃないか!」
これが、リベンジ夜更かしの正体です。
あなたがスマホを見続けているのは、情報を求めているからではありません。
奪われた「自分の時間」を取り戻そうと、必死に抵抗運動をしているのです。
つまり、夜更かしをしてしまう人ほど、実は怠惰なのではなく、「日中、自分の気持ちを押し殺して頑張りすぎている人」だと言えます。



