劇場では大コケでもNetflixで大ヒット?

アルゴリズムが心を操る?

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そして、Netflixの真の力は、この「気軽に試せる」という心理的な土壌に、精緻なアルゴリズムという魔法の杖を振るうことにあります。

確証バイアス

アルゴリズムは、あなたの視聴履歴、検索履歴、再生した時間、スキップした箇所など、ありとあらゆるデータを分析しています。そして、「あなたが好きそうな作品」をピンポイントでおすすめしてきます。これは心理学でいう確証バイアスを巧みに利用しています。確証バイアスとは、自分の信念や仮説を裏付ける情報を無意識に探してしまう心理傾向のことです。アルゴリズムは、過去のあなたの行動から「あなたはこういうものが好きだ」という仮説を立て、それに合致する作品を次々と提示してきます。

これにより、私たちは無意識のうちに「ああ、やっぱり私はこういうのが好きだ」「Netflixは私の好みをよくわかっている」と感じ、そのプラットフォームへの信頼感を高めていきます。そして、劇場では見向きもしなかったようなニッチな作品や、事前評価の低い作品でも、「Netflixが勧めてくれたから」という信頼のもと、再生ボタンを押してしまうのです。

コメディやドキュメンタリーがNetflixで花開く理由

劇場での興行収入は振るわなかったものの、Netflixでは大成功を収めるジャンルがあります。その代表格が、コメディとドキュメンタリーです。

コメディ:他人の目を気にせず笑える空間

コメディは、笑いのツボが人それぞれ異なるため、万人受けが難しいジャンルです。劇場では「もしウケなかったらどうしよう…」という不安が鑑賞のハードルになることもあります。しかし、自宅で一人、または気心の知れた人と見るなら、他人の目を気にすることなく、心ゆくまで笑うことができます。この「パーソナルな空間」が、コメディというジャンルをより身近なものにしたと言えるでしょう。

ドキュメンタリー:潜在的な興味を呼び覚ます

ドキュメンタリーは、特定のテーマに深い興味がなければ、なかなか手に取らない作品です。しかし、アルゴリズムがあなたの視聴履歴から「犯罪ノンフィクションが好き」「歴史ものが好き」といった傾向を把握することで、「このドキュメンタリーもきっと好きだろう」と提示してくれます。こうして、劇場では届かなかった潜在的な視聴者層に作品を届けることができるのです。

劇場とNetflix、それぞれの「ヒット」のカタチ

劇場でのヒットは、「みんなが見たいと思うもの」の最大公約数かもしれません。一方、Netflixのヒットは、「誰かが本当に見たいと心から願うもの」の集合体と言えるでしょう。アルゴリズムは、私たちが意識していない潜在的な好みや、他人の目を気にして表に出せなかった深層心理を読み解き、適切な作品を届けることで、新たなヒットの形を生み出しています。

あなたは、このアルゴリズムが提示する「おすすめ」を、どのように受け止めますか?