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輝くバズの裏側:美と心の関係〜SNSで話題のコスメが若者に与える影響〜

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大城 眞抽美
「今日の働く大人の心の健康は、明日の社会、そして未来の子どもたちへの最も大切な投資」親子支援に長年携わり、予防こそ最善のケアと実感。あなたの心が少しでも軽くなるよう、お話をじっくり伺います。
目次

現代のコスメ選びは、SNSなしには語れません。InstagramやTikTokで次々と生まれる「SNSバズコスメ」は、単なる流行を超え、私たちの美意識や自己認識にまで影響を与えています。しかし、この華やかな「バズ」の裏には、実は私たちの心の健康を蝕む影も潜んでいるのです。

この記事では、このSNSバズコスメの「光と影」を深掘りし、情報過多な時代における心の健康と真の美しさについて考えます。

コスメ情報の新時代

SNSは、美容情報を誰もが発信・アクセスできる「情報の民主化」をもたらしました。これは、コスメ業界に大きな変革をもたらし、消費者にとって大きなメリットがあります。

リアルな情報源

これまでの美容情報は、多くが企業やメディアの編集済み情報でした。しかしSNSでは、一般ユーザーやインフルエンサーが、リアルな使用感や加工なしのBefore/After動画を共有します。

例えば、「このファンデは毛穴落ちしない」「このリップはマスクに付きにくい」といった具体的な情報は、友人からの口コミのように手軽に手に入り、製品理解を深めてくれます。

多様な美を包摂

画一的な美の基準は変わりつつあります。SNSの登場で、多様な肌の色、肌悩み、ジェンダーの人々が、自分に合うコスメを見つけ、情報を発信できるようになりました。ニキビ肌の人がメイク法を公開したり、特定の肌色に合うファンデ比較動画が人気を集めたりと、従来の枠にとらわれない情報が流通しています。これは、美の多様性への意識を高め、多くの人が自分らしい美を見つける手助けとなっています。

繋がる共感

SNSは、共通の興味を持つ人々を結びつけ、コミュニティを形成します。同じコスメを使っている人同士が情報を交換したり、「これ気になってた!」と共感し合ったりすることで、オンラインでの一体感が生まれます。このようなポジティブな交流は、孤独感を減らし、自己肯定感を育むこともあります。

心理学から見るSNSの罠

しかし、SNSの恩恵は、同時に私たちの心に新たな課題を突きつけます。特に、心理学的な側面から見ると、「SNSバズコスメ」現象は、見過ごせないリスクをはらんでいます。

比較が生む劣等感

私たちの脳は、自己評価の際、他者と自分を比較する傾向があります。これは「社会的比較理論」と呼ばれます。SNS上には、フィルターや加工を施された「完璧な」インフルエンサーや「理想の顔」が日々溢れています。「あのバズコスメを使えば、私もあんな肌に」といった期待は、残念ながら現実とのギャップを生むことがほとんどです。

このギャップに直面すると、「自分はまだ足りない」「もっと美しくならなければ」といった劣等感や焦りが無意識のうちに募り、自己肯定感の低下につながる可能性があります。特に若者は、他者からの「いいね」やフォロワー数に自己価値を見出しやすく、評価に自己評価が揺れ動き、心が不安定になる危険性があるのです。

FOMO:買う恐怖

SNSが加速させる現代特有の心理現象に「FOMO(Fear Of Missing Out)」があります。

「みんなが使っている」「買わないと流行に乗り遅れる」という焦りが、衝動買いを誘発します。次々と登場する「バズコスメ」を追いかけるプレッシャーは、経済的な負担だけでなく、「手に入れたのに満たされない」虚無感や、「また無駄遣いした」という罪悪感を生むことも少なくありません。
流行に乗り遅れる恐怖が、冷静な判断を曇らせるのです。

「映え」の呪縛

SNSでは、視覚的なインパクトが重要視され、「映える」ことが正義とされる傾向があります。

これは、肌の質感や毛穴、シミ、シワといった「リアルな部分」を否定し、加工された完璧な美しさを唯一の理想としてしまう危険性があります。フィルターや加工アプリを多用することで、現実の自分とSNS上の自分との間に大きなギャップが生まれ、そのギャップに苦しむ「ボディイメージの歪み」を引き起こす可能性も指摘されています。自分の外見に不満を抱き、理想との乖離に苦しむことで、精神的なリスクを高めることもあります。

承認欲求の無限

「いいね」やコメント、フォロワー数といった「エンゲージメント」は、SNSにおける承認の指標です。バズコスメを使って「映える」投稿をすることは、これらの承認を得る手段となります。しかし、一度承認欲求が満たされても、その感覚は長く続かず、より多くの承認を求める無限ループに陥りやすいのが現状です。
これは、真の自己肯定感とは異なり、他者の評価に依存した不安定な心の状態を生み出す可能性があります。

デジタル時代の処方箋

では、このSNS時代において、私たちはどのように心の健康を守り、真の美しさを追求すれば良いのでしょうか。デジタルウェルビーイングの視点から、いくつかのヒントを提示します。

賢い情報活用

SNS上の情報を鵜呑みにせず、批判的な視点を持つ「デジタルリテラシー」を養うことが不可欠です。広告と個人の感想、加工と現実を見極める目を養いましょう。特定のインフルエンサーだけでなく、複数の情報源や美容専門家の意見も参考にすることが大切です。冷静に情報を分析し、自分にとって本当に必要なものを選ぶ習慣をつけましょう。

適度な距離感

常に情報に晒されるSNSの環境から意識的に距離を置く「デジタルマインドフルネス」を実践しましょう。SNSをチェックする時間を制限したり、通知をオフにしたりすることで、心に静寂を取り戻し、自分自身に向き合う時間を増やします。

例えば、寝る前や食事中はスマホから離れる、週に一度はSNSを見ない日を作るなど、意識的な取り組みが重要です。これにより、他者との比較からくるストレスを軽減し、自己受容を促すことができます。

内面の美を育む

真の自己肯定感は、他者の評価や外見だけでは得られません。趣味に没頭する、新しいスキルを学ぶ、ボランティア活動に参加するなど、内面的な充実感や達成感を得られる活動に目を向けましょう。外見を磨くことと並行して、内面からくる自信を育むことが、心の安定につながります。運動や瞑想、十分な睡眠といった基本的な生活習慣も、心の健康を保つ上で非常に重要です。

多様な美の受容

完璧な肌や顔立ちだけが美しさではありません。SNSのアルゴリズムが提示する画一的な美の基準に縛られず、多様な美の形を積極的に探求しましょう。自分の個性や特徴を受け入れ、それを肯定する意識を持つことが、SNSの「映え」至上主義から解放される第一歩です。友人や家族とのリアルな交流を大切にし、外見だけでなく、内面的な魅力や人間性を評価し合う関係を築くことも、自己肯定感を高める上で有効です。

美と心の調和へ

SNSバズコスメは、私たちの美容意識を刺激し、新しい発見をもたらしますが、心の健康に様々な影響を及ぼしています。特に若者が、この情報過多なデジタル時代を賢く生き抜くためには、単に流行を追うだけでなく、自分自身の心の状態に意識を向け、健全な美の価値観を育むことが何よりも重要です。

コスメは自己表現のツールであり、自己肯定感を高めるための手段であるべきです。SNSのフィルターを外した「ありのままの自分」と向き合い、内面から輝く真の美しさを追求すること。それこそが、SNS時代の私たちが目指すべき、美と心の調和の姿なのです。

あなたは、SNSの投稿を見る時、本当に心から満たされていますか?それとも、無意識のうちに何かに駆り立てられていませんか?

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