あくびが出やすい温度の謎
この冷却理論を裏付ける面白い事実があります。それは、あくびの回数は「外気温」に大きく左右されるということです。
ウィーン大学の研究によると、あくびが最も頻繁に起こるのは、外気温が20℃前後前後の時でした。逆に、外気温が体温に近い極端に暑い日や、氷点下の極端に寒い日には、あくびの回数は減少します。
なぜなら、外気が暑すぎると吸い込んでも脳を冷やせませんし、寒すぎると脳を冷やしすぎてダメージを与えてしまうからです。あくびは、「外気を使って効率よく脳を冷やせる環境」を自ら選んで発生しているインテリジェントな反応なのです。
脳がデカいとあくびが長い

2021年に発表されたマッセン博士らの大規模な比較研究(Communications Biology掲載)は、世界中の科学者を驚かせました。100種以上の哺乳類と鳥類を調査した結果、ある明確な法則が見つかったのです。
それは、「脳の容量が大きく、ニューロンの数が多い動物ほど、一回のあくびが長い」という事実です。
| 動物種 | あくびの平均時間 |
|---|---|
| マウス | 約0.8秒 |
| ウサギ | 約1.5秒 |
| イヌ | 約2.4秒 |
| 人間 | 約6.0秒 |
脳が大きく複雑であればあるほど、冷却に必要な換気量や血流量も増えるため、あくびの時間は必然的に長くなります。つまり、あなたのあくびが豪快であることは、あなたの脳がそれだけ高性能で、冷却に手間がかかる「ハイスペック・マシン」であることの裏返しなのです。
集中力を取り戻すスイッチ
「会議中のあくびは不謹慎だ」というマナーがありますが、生物学的な視点で見れば、それは「もっと集中したい」という脳の健気な努力です。
脳が疲弊し、温度が上昇してくると、意識が朦朧としてきます。あくびをすることで脳をクールダウンさせ、再び覚醒状態に戻そうとしているのです。いわば、あくびは眠りに落ちるための予兆ではなく、眠気に抵抗して意識を保つための「防衛反応」と言えるでしょう。




