些細なことで怒鳴ったり、思い通りにならないと物に当たったりする人を見て「なぜいつも怒っているんだろう?」と感じたことはありませんか?
もしかしたら、あなた自身が「感情のコントロールが難しい」と感じているかもしれません。単なる「短気な性格」や「性格の問題」で片付けられがちなその行動には、実はあなたの知らない深い理由が隠されています。
この怒りのメカニズムを理解し、あなたや大切な人がより穏やかな日々を過ごすためのヒントをお伝えします。
怒りの正体は、前頭葉が握っている

私たちの理性や感情をコントロールする司令塔、それが脳の前頭葉です。この部分は、10代頃まで発達し、20歳前後でその成長が止まると言われています。前頭葉は、私たちの理性的な思考や社会性の基礎を築く、人間らしさの根幹をなす場所です。
お酒を飲むと前頭葉から麻痺するため、その人の隠された本性(素の姿)が表に出ると言われるのは、このためです。理性的なブレーキが外れ、本来の衝動的な感情がむき出しになってしまうのです。
この前頭葉の機能が十分に発達しないまま大人になると、感情のブレーキがうまく働かず、些細なことでも感情のコントロールを失い、「キレる人」になってしまう可能性があります。
「怒りっぽい人」が育つ3つの原因
では、なぜ前頭葉の発達が不十分になってしまうのでしょうか。そのカギを握るのは、子どもの頃の環境です。
1. 感情を我慢・否定された経験
子どもの頃、親に甘やかされましたか?それとも我慢を強いられましたか?意外にも、ただ甘やかされるだけでわがままになるわけではありません。怒りっぽくなってしまうのは、むしろ感情を我慢させられたり、否定されたりした経験が原因となることが多いのです。
例えば、親に褒められたくてお皿洗いを手伝ったのに、「危ないから一人でやらないで」「ちゃんと洗えてない」と言われたとします。褒められるどころか否定された子どもは、辛い気持ちと怒りの感情でモヤモヤします。また、悲しくて泣いている時に「うるさいからいい加減泣き止んで!」と言われてしまうと、本当の気持ちを抑え込む癖がついてしまいます。
このようにして心の中に抑え込まれた感情は、やがて「怒り」として周りに発散されるようになります。気に入らないことがあると、感情の制御がきかなくなり、攻撃的な態度をとってしまうのです。
2. 親や身近な大人が怒りっぽい
「家族は似てくる」とよく言われますが、これは脳の神経細胞「ミラーニューロン」の働きによるものです。他人が運動しているのを見ているだけでも、私たちの脳の運動を司る部位にあるミラーニューロンが反応し、まるで自分も一緒に動いているかのように感じます。
これと同じことが、感情でも起こります。子どもは、最も身近な存在である親や大人の行動を無意識に真似します。親が怒っている姿をいつも見ていると、子どもの脳も怒っている時と同じ活動を始めます。この無意識の学習により、自分も怒りの感情を模倣しやすくなってしまうのです。
3. スマホやタブレットなどのストレス
今や子育ての必須アイテムともいえるスマホやタブレットも、使い方によっては感情のコントロールを難しくする原因となります。
長時間にわたる使用は、心の安定を保つための重要な神経伝達物質であるセロトニン神経の働きを弱らせると言われています。セロトニンは、疲労、ストレス、夜型生活、運動不足、コミュニケーション不足といった状態に陥ると減少しやすく、これがイライラを引き起こす一因となります。大人だけでなく、子どもの長時間利用にも注意が必要です。