こんにちは。こころのかふぇ代表の大城です。
早速ですが、皆さん、想像してみてください。
あなたは仕事でクタクタになって帰宅します。楽しみにしていたのは、冷蔵庫に残しておいた昨日の夕飯の残りの唐揚げ3つ。それを楽しみにあなたは一日を乗り切ったのです。
しかし、冷蔵庫を開けた瞬間、あなたは凍りつきます。
皿は空っぽ。あるのは虚無だけ。
リビングには、満足げにお腹をさするパートナー。「ああ、あれ? あったから食べちゃった」
怒りが爆発しますよね? 「なぜ私の分を残しておかないの?」「人間としての心はないの?」と。
では、場面を切り替えましょう。
夕食後、あなたの子供がリビングでYouTubeを見ています。「宿題やったの?」と聞くと、子供はまるでこの世の終わりのような顔をして叫びます。「今やろうと思ってたのに!!」
そして結局、ノートは開かれません。
一見、この「唐揚げを食い尽くすパートナー」と「宿題をやらない子供」は、全く別の問題に見えます。一方は配慮の欠如、もう一方は怠慢。
しかし、脳科学と心理学の視点から見ると、この二人の頭の中では驚くほど似通った「システムエラー」が起きているのです。
今日は、私たちの脳に潜むこのメカニズムを解き明かし、怒りを「戦略」に変える方法をお話ししましょう。
犯人は「双曲割引」という名のモンスター

なぜ、大人が子供の分まで食べ物を奪い、子供は未来のために必要な勉強を拒否するのか。
その最大の犯人は、行動経済学で「双曲割引(Hyperbolic Discounting)」と呼ばれる心理現象です。
名前は難しいですが、仕組みはシンプルです。
私たちの脳は、「遠くの大きな利益」よりも、「近くの小さな快楽」を異常なほど高く評価するようにできているのです。
食い尽くし系のパートナーの脳内を見てみましょう。
彼らの目の前には「ジューシーな唐揚げ(現在の快楽)」があります。一方で、脳の片隅には「妻(夫)が後で喜ぶ(未来の利益)」や「食べたら怒られる(未来の損失)」という情報もあるはずです。
しかし、双曲割引のバイアスがかかると、目の前の唐揚げの価値が爆発的に膨れ上がり、未来の平和やパートナーの感情が「極小化」されてしまうのです。
宿題をやらない子供も全く同じです。
「勉強をして将来賢くなる」「先生に褒められる」という未来の価値は、彼らにとってあまりに遠すぎて、霞んで見えません。それよりも、目の前の「YouTube(現在の快楽)」の価値が、圧倒的な質量で彼らを押しつぶしているのです。
彼らは性格が悪いのではありません。「現在バイアス」という名の重力に、前頭葉が負けているのです。
「心の理論」の欠如と、見えない他者
もう一つ、興味深い共通点があります。それは「見えないものは存在しない」という認知の罠です。
心理学には「心の理論(Theory of Mind)」という概念があります。他者の視点に立ち、他者の感情をシミュレーションする能力です。
「食い尽くし系」の人々において、この機能は食事の瞬間にしばしば「オフ」になります。
皿に盛られた料理は、彼らにとって単なる「資源」です。その向こう側に、「これを楽しみにしている誰か」という他者の物語を想像する回路が遮断されています。これは悪意というより、想像力の欠如、もっと言えば「認知的近視」です。
宿題をやらない子供も、ある意味で「未来の自分」という他者への想像力が欠けています。
「今の自分がサボれば、明日の自分が学校で恥をかく」という、「明日の自分への共感」ができないのです。




