なぜ「いじめ」は消えず、なぜ「動けない」のか。精神医学が解き明かす不登校の真実

Close-up of a child's hands covering their face, creating a playful and mysterious vibe.

記事の目次

休むことは脳の治療

A child enjoys reading books inside a library, surrounded by shelves.

不登校は、脳が「これ以上は壊れてしまう」と発したSOSです。このとき必要なのは、無理に登校させる根性論ではなく、徹底的な「安心感の提供」です。

安心できる環境で過ごすことで、脳の神経可塑性(修復能力)が働き、麻痺していた前頭葉が再び動き出します。

不登校という「脳の緊急避難」のあとに必要なのは、単なる休息ではなく「神経系の再構築」です。医学的エビデンスに基づいた、脳を健やかに回復させるための過ごし方と、新しい学びの場の価値についてまとめました。

脳を修復する具体的な過ごし方

不登校直後の脳は、慢性的な高ストレスにより、記憶を司る「海馬」や感情を制御する「前頭前野」が疲弊しています。これらを修復するには、ステップが有効です。

1. 「安全感」による偏桃体の鎮静

脳の警報装置である「偏桃体」の過活動を抑えるには、本人が「ここは100%安全だ」と生存本能レベルで実感する必要があります。

アドバイス

登校の督促や「将来どうするの?」という問いかけを完全に断ち切ります。脳が「外敵がいない」と判断するまで、徹底的にリラックスできる環境(好きなゲームや趣味に没頭する時間)を保障してください。

2. オキシトシンによる神経修復

親しい人やペットとの交流で分泌される「オキシトシン」には、ストレスホルモンであるコルチゾールのダメージを軽減し、神経細胞の成長を促す効果があります。

アドバイス

無理な会話より、一緒に美味しいものを食べる、並んで映画を観るなどの「心地よい共有体験」を優先しましょう。

3. セロトニンを整えるリズム運動

不登校で乱れがちな睡眠リズムを整えるには、日光浴と軽いリズム運動(散歩など)が欠かせません。

アドバイス

セロトニンは「心の安定剤」です。朝、カーテンを開けて光を浴びる、あるいは5分だけ外を歩くことで、脳内の化学バランスが劇的に改善します。

オルタナティブ教育の脳への効能

学校以外の学びの場(フリースクールやオンライン学習など)は、単なる「避難所」ではなく、脳の可塑性(変化する能力)を最大限に引き出す場所です。

「報酬系」の正常な再起動

学校での失敗体験で「どうせ無理だ」という学習性無力感に陥った脳にとって、自分の興味関心から始まる学びは強力な薬になります。

効果

自分で選んだ課題に取り組む際、脳内ではドーパミンが分泌されます。これが前頭葉を刺激し、「自分で人生をコントロールしている」という自己効力感を取り戻させます。

心理的安全性が生む「思考の拡大」

集団の同調圧力がなく、個性が尊重される環境では、脳の「防衛モード」が解除され、「探索モード」に切り替わります。

効果

恐怖を感じていない状態では、脳のネットワークが広がり、創造性や論理的思考を司る領域が活性化します。これは、画一的な教育では得られにくい、現代社会で最も必要な能力(非認知能力)の育成に直結します。

脳は何度でも作り直せる

精神医学の知見は、「脳には生涯を通じて変化する力(可塑性)がある」ことを証明しています。今の不登校は、より自分に合った「脳の配線」を組み直すための、貴重な充電期間と言えるでしょう。