あなたが熱心に応援するアイドルや、つい時間を忘れて見てしまうオーディション番組。彼らがなぜこれほどまでに私たちの心を捉えて離さないのか、不思議に思ったことはありませんか?
単なるエンターテインメントを超え、彼らが私たちの心の奥底に響くのには、深層心理のメカニズムが深く関わっています。これは、彼らの活動が私たちの「物語への渇望」を満たしているからです。
なぜ私たちは「物語」を求めるのか?

私たちは古代から、物語と共に生きてきました。それは、物語が私たちの感情を整理し、人生の困難を乗り越えるヒントを与えてくれるからです。映画、小説、アニメ、そしてアイドルの活動もまた、私たちの心を惹きつけてやまない「物語」の一つなのです。
私たちは物語の登場人物に自分を重ね合わせ、彼らの成功や失敗を追体験することで、自分の心の状態を理解したり、新たな視点を得たりします。この心理的なプロセスは、特にアイドルやオーディション番組において、より強く機能します。なぜなら、彼らの物語は「フィクション」ではなく、現実の成長物語だからです。
アイドルが織りなす「英雄の旅」
スイスの心理学者、カール・ユングは、人間の集合的無意識の中に、普遍的な物語のパターンが存在すると考えました。その一つに、神話学者のジョーゼフ・キャンベルが提唱した「英雄の旅(Hero’s Journey)」があります。
これは、平凡な人物が冒険に出て、試練を乗り越え、成長して帰還するという物語の archetypal(元型)です。
アイドルやオーディション参加者は、この「英雄の旅」をリアルに体現しています。
- 「冒険への誘い」
オーディションへの参加や、芸能界という未知の世界への一歩 - 「試練」
厳しいレッスン、連日のリハーサル、期待とプレッシャー - 「最大の危機」
スランプ、怪我、失敗、そして時にはSNSでの批判 - 「帰還」
試練を乗り越え、見違えるように輝いてステージに立つ姿
私たちは、彼らが試練に立ち向かい、挫折を経験し、そして再び立ち上がる姿をリアルタイムで追体験することで、その物語の目撃者になります。彼らの成功を自分のことのように喜び、挫折を自分のことのように悲しむのは、無意識のうちにこの「英雄の旅」に感情移入しているからです。