「落書き禁止」が落書きを増やす皮肉

ある有名な実験をご紹介しましょう。
大学のトイレの壁に、2種類の張り紙を出しました。
- 張り紙A 「いかなる状況でも、この壁に落書きをしてはならない(強い命令)」
- 張り紙B 「この壁には落書きをしないようにしてください(弱いお願い)」
結果はどうなったと思いますか?
驚くべきことに、「強い命令」を書いたAの張り紙がある場所の方が、圧倒的に多くの落書きが書かれたのです。
人は「お願い」されると協力的になれますが、「命令」されると、自分の自由を守るために「あえて落書きをする」という行動で反撃に出てしまう。これが心理的リアクタンスの力です。
「ロミオとジュリエット」は、なぜあんなに燃え上がったのか?
恋愛でも同じことが言えます。
親から「あの人と付き合うのは絶対に反対だ!」と猛烈に反対されると、二人の絆はかえって強まり、愛が深まったように感じてしまう。これを「ロミオとジュリエット効果」と呼びます。
もし親が「いいんじゃない? 好きにすれば」と放っておいたら、意外とすぐに冷めていたかもしれない。そんな恋が、「禁止」というスパイスが加わることで、命をかけるほどのドラマに変貌してしまうのです。
この「心のバグ」をどう使いこなすか?
心理的リアクタンスを知ると、自分の感情をコントロールしやすくなります。
例えば、勉強しなきゃいけないのにスマホを触りたくなった時、自分を責める前にこう考えてみてください。
「今、脳が勝手に『勉強しろって言われるくらいなら、スマホを触って自由を証明してやる!』って誤作動を起こしてるな。」と。
そう客観的に見るだけで、スマホの輝きは少しだけ色褪せて見えます。
また、もしあなたが誰かに何かを頼みたい時は、絶対に「命令」してはいけません。
「選択肢を与える」のがコツです。
「宿題やりなさい!」と言う代わりに、「先に漢字をやる? それとも計算にする?」と聞く。
相手に「自分で選んだ」という感覚(自由)を残してあげることで、心理的リアクタンスの爆発を防ぐことができるのです。
最後に
「悪いこと」をしたくなるのは、あなたが自由を愛している証拠です。そのエネルギー自体は、自分の人生を自分で切り拓くための、とてもパワフルなエンジンになります。
でも、そのエンジンのせいで、本当に大切にしたいこと(例えば、自分の将来や、身近な人との関係)を壊してしまってはもったいない。
次に「ダメ」と言われてムカッとした時は、心の中でこうつぶやいてみてください。
「おっと、私の心理的リアクタンスが暴れ出そうとしてるぞ。でも、私の自由は、反抗することじゃなくて、自分で一番いい道を選ぶことにあるんだ」
その一瞬の気づきこそが、あなたを本当の意味で「自由」にしてくれるはずですから。
次のページへ進んで、セルフチェック診断をやってみましょう。




