あなたは幸せになっていい

「誰も助けてくれなかった」心の叫び。トラウマを乗り越え、自分らしい人生を取り戻すために

こころとこころをつなぐ、こころのかふぇ
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大城 眞抽美
「今日の働く大人の心の健康は、明日の社会、そして未来の子どもたちへの最も大切な投資」親子支援に長年携わり、予防こそ最善のケアと実感。あなたの心が少しでも軽くなるよう、お話をじっくり伺います。
目次

「もし、あの時誰かが気づいてくれていたら…」

最近、児童養護施設での凄惨な性被害のニュースが報じられました。信頼すべき大人や安全であるはずの場所で受けた心の傷は、計り知れないほど深く、その後の人生に大きな影を落とします。

この記事は、特別な誰かの話ではありません。声に出せない苦しみを抱え、今も一人で戦っているあなた、そして、大切な人が苦しんでいるかもしれないと感じているあなたへ向けて書いています。

つらい記憶、すなわち「トラウマ」とどう向き合い、どうすれば自分らしい穏やかな日々を取り戻せるのか。その一歩を踏み出すためのヒントをお伝えします。

「トラウマ」とは何か?見えない心の傷の正体

トラウマとは、単なる「嫌な記憶」ではありません。生命の危機を感じたり、自分の尊厳が著しく傷つけられたりするような出来事によって、心と体に深く刻み込まれた「傷」のことです。

トラウマが引き起こす主な症状

フラッシュバック
突然、つらい記憶が鮮明によみがえる。

過覚醒
常に神経が張り詰め、眠れない、些細なことでひどく驚く。

回避
その出来事を思い出す場所や人を無意識に避ける。

ネガティブな感情
自分や他人を信じられなくなり、絶望感や無力感に襲われる。

自己否定
「自分が悪かったのではないか」と自分を責めてしまう。

これらの反応は、異常な出来事に対する「正常な反応」です。決してあなたの心が弱いわけではありません。

なぜ声を上げられないのか?- 被害者を縛る「沈黙の鎖」

ニュースの被害者も、長年苦しみを打ち明けられずにいました。なぜ、つらい経験をした人ほど、その事実を話すのが難しいのでしょうか。

恐怖と無力感
「話しても信じてもらえない」「また傷つけられるかもしれない」という恐怖。

罪悪感と羞恥心
「自分にも隙があったのでは」「こんなことを知られたら軽蔑される」と自分を責めてしまう。

信頼できる人の不在
そもそも「助けて」と言える相手が周りにいなかった。

こうした感情が複雑に絡み合い、被害者を「沈黙の鎖」で縛り付けてしまうのです。もしあなたが同じような気持ちを抱えているなら、まず知ってください。あなたは、決して悪くありません。

「声を上げても、何も変わらなかった」

勇気を振り絞って声を上げたのに、何も変わらなかった。それどころか、「そんな昔のことを」「あなたにも原因があったのでは」と心ない言葉でさらに傷つけられた(二次被害)。

そんな経験をすれば、「もう誰にも話さない」「声を上げても無駄だ」と心を閉ざしてしまうのは、当然のことです。その絶望感は、あなたの心が感じた正直な反応であり、決して間違ってはいません。

しかし、諦めてしまう前に、一度だけ立ち止まって考えてみませんか?

声を上げる「目的」と「場所」についてです。

あなたの声は、世界を一瞬で変える魔法の杖ではないかもしれません。しかし、その声は、あなた自身の心を守るための、そして、たった一人でもいい、信頼できる味方を見つけるための「光」になり得ます。

信じてもらえなかったのは、相手に受け止める力がなかっただけかもしれません。あなたに合った場所、専門的な知識を持ち、あなたの痛みに寄り添う準備ができている人たちも、必ず存在します。その「一人」や「一つの場所」に繋がることが、回復の大きな転機となるのです。

回復への第一歩 – 安全な場所で、自分をいたわることから

深く傷ついた心を一人で癒すのは、非常に困難な道のりです。骨折をしたら病院へ行くように、心の傷も専門家の助けを借りることが、回復への一番の近道です。

今日からできる、回復へのステップ

安全な場所を確保する: まずは心と体を休ませ、安心できる環境を最優先に考えましょう。これ以上傷つかない場所を選ぶことが何よりも大切です。

「話す相手」を慎重に選ぶ
全ての人に理解を求める必要はありません。まずは守秘義務のある専門家(カウンセラー、弁護士など)や、被害者支援の経験が豊富な団体に相談することから始めてみましょう。

同じ経験を持つ人と繋がる
被害者支援団体や自助グループでは、同じような痛みを知る人々と気持ちを分かち合うことができます。そこでは、あなたの言葉が否定されることはありません。「一人ではない」と感じられることが、大きな力になります。

自分を大切にする時間を作
好きな音楽を聴く、温かいお風呂にゆっくり入る、美味しいものを食べる。どんな些細なことでも構いません。自分をいたわる時間を持つことを、自分に許可してあげてください。

社会ができること – 「ひとりにしない」支援の輪を広げる

この問題は、個人の問題だけで終わらせてはいけません。私たちの社会全体で、被害者を孤立させない仕組みと意識を作っていく必要があります。

話を聴く姿勢
もし誰かが勇気を出して打ち明けてくれたら、決して否定せず、ただ「話してくれてありがとう」と受け止める。

正しい知識を持つ
トラウマや二次被害への理解を深め、誰もがためらわずに助けを求められる社会を目指す。

支援団体への関心
被害者支援を行っている団体への寄付やボランティアなど、自分にできる形で関心を持つ。

あなたの人生は、あなたのもの

過去の出来事が、あなたの未来のすべてを決めるわけではありません。
「どうせ変わらない」という絶望が、明日への希望を覆い隠してしまう夜もあるでしょう。しかし、あなたは幸せになる権利があります。穏やかな日々を取り戻し、「生きていてよかった」と思える瞬間は、必ず訪れます。

どうか、一人で抱え込まないでください。
その一歩を踏み出す勇気を、社会は全力でサポートします。

もしあなたが、またはあなたの周りの人がつらい経験で悩んでいたら、以下の窓口に相談してください。匿名での相談も可能です。

【相談窓口・支援情報】

性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター
全国共通短縮ダイヤル: #8891 (はやくワンストップ)

性暴力被害の当事者・経験者のためのオンライン・コミュニティ
(内閣府「性暴力に関するSNS相談支援促進事業」)
https://curetime.jp

よりそいホットライン
どんなひとの、どんな悩みにも寄り添って、一緒に解決する方法を探します。
電話番号: 0120-279-338

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