こんにちは。こころのかふぇ代表の大城です。
早速ですが想像してみてください。
あなたは今、疲れ果てて帰宅する途中にスーパーに寄りました。買うべきものは牛乳と卵だけ。しかし、レジ横で「うるうるした大きな瞳」で見つめてくる、丸っこいアザラシのキャラクターパッケージのお菓子と目が合ってしまいます。
気づけばあなたは、予定になかったそのお菓子をカゴに入れ、さらには家にいる猫のために、自分のお弁当より豪華な高級缶詰まで買っている。
…実はこれ、私たちの心の中に、数百万年前から深く刻まれている「ある魔法」が発動した瞬間なのです。
今日は私たちの理性を一瞬でとろけさせ、世界を優しく変えてしまう「可愛さの科学ベビースキーマ」の秘密についてお話します。
脳内に組み込まれた「愛のスイッチ」
1943年、動物行動学者のコンラート・ローレンツは、ある不思議な事実に気づきました。なぜ人間は、自分の子供でもないのに、子犬や子パンダ、あるいは丸っこいイラストを見ただけで「守ってあげたい!」と胸が熱くなるのか。
彼はその特徴を、「ベビースキーマ(幼児図式)」と名付けました。
- 体に対して大きすぎる頭
- 顔の下の方に配置された大きな目
- ふっくらした頬と、丸みをおびたフォルム
これらを見た瞬間、私たちの脳内では「ドーパミン」という快楽物質が溢れ出します。これは、美味しいものを食べた時や、嬉しいことがあった時と同じ反応です。
つまり、私たちは「可愛い」と感じるよりも先に、脳が反射的に「これは大切なものだ!大事にしよう!」という幸福感あふれるメッセージを受け取っているのです。このスイッチがあるおかげで、人類は無力な赤ちゃんを慈しみ、育ててくることができました。
猫は「心の扉」を開くマスターキー

ここで、身近な「可愛さのプロ」である猫に注目してみましょう。なぜ猫は、これほどまでに私たちの心を掴んで離さないのでしょうか?
実は猫の顔の比率は、生物学的に見て驚くほど「人間の赤ちゃん」に似ています。猫は、私たちが本能的に求めてしまう「ベビースキーマ」を、奇跡的なバランスで持ち合わせているのです。
さらに、彼らの「声」にも秘密があります。
研究によると、猫が甘えて鳴く時の周波数は、「人間の赤ちゃんの泣き声」の周波数と重なるように作られているという説があります。
あなたが家事の手を止めて猫の要望に応えてしまう時、それはあなたの心が「誰かを助けたい」という純粋で優しい本能に従っている証拠なのです。
「可愛すぎて苦しい」という幸せな矛盾
ところで、皆さんはこんな経験はありませんか?
赤ちゃんやペットを見ていて、「あ〜!もう可愛すぎて、ぎゅーーーっと抱きしめすぎてしまいたい!」と、少しもどかしいような、爆発しそうな気持ちになること。
心理学ではこれを「キュート・アグレッション(可愛いものへの攻撃的衝動)」と呼びます。
名前は少し物騒ですが、これは脳が自分を守るための「癒やしの調整」なのです。脳があまりにも強烈な「可愛い!」という幸福感を受け取ると、その刺激に圧倒されてバランスを崩してしまいます。そこで、あえて反対の刺激を混ぜることで、心を落ち着かせようとするのです。
「可愛すぎて苦しい」と感じるのは、それだけあなたの心が豊かな愛着で満たされている証に他なりません。
私たちの日常を彩る「丸い魔法」

この「ベビースキーマ」の魔法は、私たちの身の回りにも溢れています。
例えば、人気キャラクターたちの歴史を見てください。ミッキーマウスもピカチュウも、登場したばかりの頃に比べて、年々「目は大きく」「顔は丸く」進化しています。これは、私たちがより親しみを感じ、癒やされる形へと、彼らも寄り添ってくれている結果なのです。
車のデザインや家電製品に丸みが増えているのも同じ理由です。無機質な道具の中に「ベビースキーマ」のエッセンスを加えることで、私たちの暮らしを少しでも温かく、心地よいものにしようという工夫が隠されています。
私たちは「愛するように」できている
さて、ここまでお話ししてきましたが、いかがでしたでしょうか。
ベビースキーマに反応してしまうこの仕組みは、私たちが決して孤独ではなく、「誰かを慈しみ、つながり合いたい」という本能を持っていることを教えてくれます。
私たちが丸いものに惹かれ、ついつい貢いでしまうとき、そこにあるのは弱さではありません。それは、生命を慈しむための、人間らしい温かなエネルギーです。
次にレジ横で、あるいは大好きなペットの前で心が動いたときは、ぜひ自分自身にこう言ってあげてください。
「私の心は、今日も優しさで溢れている」と。
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