あなたは幸せになっていい

損失2.7兆円。「休めない日本」の深刻な代償

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大城 眞抽美
「今日の働く大人の心の健康は、明日の社会、そして未来の子どもたちへの最も大切な投資」親子支援に長年携わり、予防こそ最善のケアと実感。あなたの心が少しでも軽くなるよう、お話をじっくり伺います。
目次

「なんだか心が疲れているのに、休めない…」
「うつ病かもしれないけど、仕事を休むわけにはいかない…」

そんな風に、心の中で悲鳴を上げながらも日々頑張り続けている方はいませんか?

この記事では、なぜ多くの日本人が「休めない」状況に陥ってしまうのか、その背景を最新のデータと共に読み解き、あなた自身や大切な人を守るための具体的な方法、そして社会全体で取り組むべき未来への提言をまとめました。

なぜ?心が「休めない」4つの理由

うつ病を抱えながらも「休む」という選択ができない。その背景には、一つの理由だけではない、複雑な要因が絡み合っています。

社会の目というプレッシャー
「うつ病は甘え」「気持ちの問題だ」といった根強い偏見が、当事者を孤立させます。

経済的な不安
「休んだら生活できない」という切実な問題が、無理をしてでも働き続けるしかない状況を生み出します。

職場での責任感
「自分が休んだら周りに迷惑がかかる」という強い責任感が、休むことへの罪悪感につながります。

内面化された価値観
「頑張らなければ価値がない」という思い込みが、自分自身を追い詰めてしまいます。

これらの要因が”見えない鎖”となり、心と体が限界を超えても、私たちを「働く」という場所から離れられなくさせてしまうのです。

次に、この問題の深刻さを客観的なデータから見ていきましょう。

日本のデータと若者の危機

厚生労働省の調査によると、うつ病を含む気分障害で医療機関を受診する人は、近年わずかに減少傾向にあるものの、依然として約160万人を超える高い水準にあります。
(参考:厚生労働省 患者調査より)

特に深刻なのが若者たちのメンタルヘルスです。20代で心の不調を理由に仕事を辞める人の割合は、他のどの年代よりも突出して高いというデータもあり、社会全体で取り組むべき喫緊の課題となっています。

世界共通の「心の危機」

この問題は日本だけではありません。WHO(世界保健機関)によると、世界の成人の約5%がうつ病に罹患しているとされています。新型コロナウイルスのパンデミックは、この状況をさらに加速させました。まさに、世界中がメンタルヘルスの危機に直面しているのです。

「休めない」まま頑張り続けることは、心と体、そして社会にどのような影響を与えるのでしょうか。

心と社会への大きな損失

無理を続けると、うつ病の症状が悪化・慢性化するだけでなく、燃え尽き症候群や他の病気を引き起こすリスクも高まります。

この問題は、個人にとどまらず、社会全体にも大きな損失をもたらします。ある推計では、自殺やうつ病が原因で失われる日本の経済的損失は、年間約2.7兆円にものぼるとされています。

「頑張りすぎ」の悪循環

一度この状態に陥ると、負のループから抜け出すのは容易ではありません。

過度な責任感・周囲の期待

  1. 無理な頑張り・心身の疲弊
  2. 症状悪化・自己評価の低下
  3. 「休めない」・罪悪感
  4. さらなる孤立・絶望感
  5. (1.に戻る)

このループを断ち切るためには、「休む勇気」と正しい知識が必要です。

心を軽くする3つのアプローチ

どうすれば、この悪循環を断ち切り、誰もが安心して休める社会を築けるのでしょうか。私たちは、社会・職場・個人の3つのレベルで対策が必要だと指摘します。

社会・職場・個人の対策

うつ病の予防には、社会・職場・個人がそれぞれのレベルで連携して取り組むことが重要になります。

社会レベル
メンタルヘルスに関する偏見をなくし、誰もが気軽に相談できる環境や制度を整える。

職場・学校レベル
ストレスチェックやハラスメント対策を徹底し、休職からの復帰をサポートする。

個人レベル
自分のストレスサインに早く気づき、つらい時は勇気を出してSOSを伝える。

今日から始めるセルフケア

うつ病を日頃から予防し、心の健康を保つためには、日々のセルフケアがとても大切です。少しずつ、出来る時にでも良いので、今日からできることから始めてみませんか?

ストレスの早期認識
自分の心と体の変化に敏感になる。

質の高い睡眠
毎日なるべく同じ時間に寝て、起きる。

バランスの取れた食事
栄養のある食事を心がける。

適度な運動
無理のない範囲で、運動を習慣にする。

社会的つながり
信頼できる人に気持ちを話してみる。

未来へ。私たちができること

「うつ病でも休めない」という”見えない鎖”は、決して断ち切れないものではありません。

この記事を読んでくださったあなたも、ぜひ周りの人や自分自身の心の健康に関心を持ってみてください。

心の健康が何よりも尊重され、誰もが自分らしく生きられる社会の実現に向けて、私たち一人ひとりができることから始めてみませんか。

【相談窓口のご案内】

もし、つらい気持ちを抱えていたり、誰かに相談したいと感じたら、一人で抱え込まずに専門の窓口に相談してください。下記は相談窓口です。件名をクリックするとページに飛びます。

まもろうよ こころ(厚生労働省)
こころの耳(働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト)
いのちの電話

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