大谷翔平選手と元通訳の水原一平氏を巡る騒動は、世界に衝撃を与えました。長年、深い信頼関係にあった二人の間でなぜ裏切りが起きたのか?その背景には、私たち人間が誰しも持ちうる「正常性バイアス」という心の働きが潜んでいます。
正常性の罠

人間は、異常な事態に直面すると、それを「きっと大丈夫」と正常な範囲内として捉えようとする心理傾向があります。これを正常性バイアスと呼びます。
大谷選手にとって水原氏は、渡米当初から公私にわたって支え、家族同然の存在でした。この揺るぎない信頼があったからこそ、水原氏の言動にわずかな違和感があったとしても、大谷選手の心は無意識のうちに「まさか彼が」というバイアスを働かせた可能性があります。
例えば、不審な行動や曖昧な説明があったとしても、「いつものことだろう」「単なる誤解だ」と、危険信号を過小評価してしまったのかもしれません。このバイアスは、災害時に避難が遅れるケースなど、生命に関わる状況でも見られるほど強力です。深い信頼関係の中でこそ、相手の異常な行動を「特別ではない」と認識してしまう、この心理の罠は、私たち自身の日常生活でも起こりやすいものなのです。
矛盾の回避
さらに、「認知的不協和」という心理も深く関係しています。これは、自分の信念と矛盾する情報に直面した際に生じる、不快な心理状態を指します。人間はこの不快感を解消しようと強く動きます。
大谷選手には、「水原氏は絶対に信頼できる通訳であり友人」という強固な信念がありました。もし、水原氏の行動がその信念と対立する情報として認識されたとしても、その不協和な状態は非常に不快です。この不快感を解消するために、人は無意識のうちに事実を認めようとせず、自身の都合の良いように情報を解釈したり、不都合な情報を無視したりしてしまうことがあります。
「水原さんがそんなことをするはずがない」「きっと何か理由がある」といった思考は、まさに認知的不協和を解消しようとする心の動きです。自分自身の世界観や自己肯定感を維持しようとする自然な働きであり、特に長年築き上げた人間関係の中でこそ、この心理が強く現れ、真実から目を背けさせる要因となる傾向があります。
日常の思考停止
大谷選手に起きたことは特殊な環境での出来事ですが、正常性バイアスや認知的不協和といった心理は、私たち誰もが日常生活で直面しうる、普遍的な心の働きです。
友人、家族、同僚など、身近な人間関係で「まさかこの人が?」と感じる出来事があった時、私たちは無意識のうちにこれらのバイアスに囚われ、真実や危険信号を見誤る可能性があります。相手を信頼するがゆえに、安易に思考停止に陥ったり、都合の良い解釈をしてしまったりする危険性は、誰にでも潜んでいるのです。
今回の件は、単なるゴシップとして消費するのではなく、私たち自身の人間関係における盲点や、リスク管理の重要性について深く考えるきっかけを与えてくれました。身近な人への過度な信頼が、時に予期せぬ事態を引き起こし、大きな損失や心の傷となりうることを、大谷選手の件は痛烈に示唆しています。
理想の人間関係とは

では、私たちが目指すべき理想の人間関係とは、どのようなものでしょうか?
今回の出来事から得られる教訓は、闇雲に他人を疑うことではありません。むしろ、健全な信頼を育み、それを支える適切な心の姿勢こそが大切なのです。
「もしも」を考える健全な視点
相手を盲目的に信じ込むのではなく、「もしも、こんなことが起きたらどうしよう?」という可能性を、冷静に考えてみる視点を持つこと。これは相手を疑うことではなく、万が一の事態に備えるための「リスク管理」だと捉えましょう。いざという時に困らないための、心の準備のようなものです。
心を開く「対話の習慣」
もし、相手との間で疑問や不安を感じたら、それを心の中にため込まず、感情的にならずに率直に話し合うことが大切です。一方的に話すだけでなく、相手の意見にも耳を傾け、お互いに確認し合う「双方向のコミュニケーション」を習慣にしましょう。そうすることで、誤解が生まれにくくなり、何かを隠されるリスクも減らせます。
多角的に捉える「視野の広さ」
一つの情報や、たった一人の意見だけで物事を決めつけないようにしましょう。友人や家族、あるいは専門家など、様々な人の意見を聞いたり、客観的なデータを確認したりする習慣を持つことで、よりバランスの取れた判断ができるようになります。視野を広げることが、思わぬ落とし穴を避けることにつながります。
「自分軸」を持つ自立心
最終的な決断や行動には、常に自分自身の責任が伴うことを忘れないでください。他者に全てを任せきりにして依存するのではなく、自分で考え、自分で決めるという「自立した心」を持つことが重要です。
自分の人生のハンドルは、常に自分で握っている意識を持ちましょう。
今回の出来事は、信頼と裏切りの深層に迫る心理学的な洞察を与えてくれました。私たちはこの経験から何を学び、今後の人間関係や意思決定にどう活かしていくべきでしょうか?
健全な人間関係を築くためには、相手への信頼はもちろんのこと、自分自身の心の傾向を理解し、客観的な視点を保ち続ける努力が不可欠なのかもしれません。
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